症状別解説

胃下垂・胃の働きの低下

胃下垂は,胃の位置が通常より低い状態を示す言葉です.胃の位置だけで症状の有無は決まらず,食後の膨満感,早期満腹感,みぞおちの不快感などは,胃の運動や知覚,食事量,ストレスなど多くの要因と関係します.

胃の位置と胃の症状を分けて考える

胃が下がって見えること自体は,必ずしも病気や症状の原因を意味しません.食後のもたれ,少量で満腹になる,みぞおちが痛むなどの症状は,機能性ディスペプシア,胃炎,潰瘍,薬剤の影響などでも起こります.

症状の経過,食事との関係,体重変化,便の色,嘔吐の有無を確認します.

胸郭と腹部の緊張をみる

長生医学的には,胸椎中部,胸郭,横隔膜,腹部の緊張,姿勢,呼吸を関連づけてみます.食後の不快感を避けて前かがみになると,胸郭の動きが小さくなり,背部の緊張が増えることがあります.

手技で胃の位置を正常化すると説明するのではなく,腹部を圧迫しない姿勢や呼吸,体幹の緊張を整えることを目的とします.

施術前に確認すること

  • 食後の膨満感,早期満腹感,みぞおちの痛みの有無
  • 症状が出る食事量,食材,時間帯
  • 体重減少,嘔吐,黒い便,血便がないか
  • 胃カメラ,腹部画像,血液検査の受診歴
  • 鎮痛薬,鉄剤,糖尿病薬など服薬の影響

腹部を圧迫せず全身の緊張を整える

医療機関での評価を受け,施術が適すると判断できる場合に,胸郭,背部,腰部,骨盤の緊張と呼吸を確認します.食後すぐの腹部へ強い圧力を加えず,楽に呼吸できる姿勢を選びます.

消化器症状を手技だけで扱わず,食事の調整や医療機関での治療と並行して,身体のこわばりを整えます.

日常生活で意識すること

1回に多量を食べず,症状が強い場合は少量ずつに分けます.食後すぐに横になったり,腹部を締めつけたりせず,楽な姿勢で過ごします.

食事内容と症状を記録し,体重減少や症状の長期化がある場合は消化器内科へ相談します.

参考資料

  1. Wauters L, Dickman R, Drug V, et al. United European Gastroenterology and European Society for Neurogastroenterology and Motility consensus on functional dyspepsia. United European Gastroenterology Journal. 2021;9(3):307-331. doi:10.1002/ueg2.12061
  2. Miwa H, Nagahara A, Asakawa A, et al. Evidence-based clinical practice guidelines for functional dyspepsia 2021. Journal of Gastroenterology. 2022;57:47-61. doi:10.1007/s00535-021-01843-7

医療機関での確認を優先する状態

次の状態では,潰瘍,出血,閉塞,腫瘍などを確認するため,消化器内科での検査を優先します.

  • 意図しない体重減少がある
  • 吐血,黒い便,血便がある
  • 食物がつかえる,飲み込みにくい
  • 繰り返す嘔吐,水分も取れない状態がある
  • 強い腹痛,腹部の硬さ,発熱を伴う
  • 貧血を指摘された,または症状が長く続いている