症状別解説

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアは,椎間板の一部が後方へ突出し,神経根を刺激することで腰痛や脚の痛み,しびれ,筋力低下を生じることがあります.画像上の変化と症状が必ずしも一致しないため,神経学的な所見と経過を合わせて判断します.

椎間板と神経根の状態を分けて考える

椎間板は,腰椎の間で荷重を受け止める組織です.前かがみ,持ち上げ動作,咳やくしゃみで脚の痛みが強くなる場合がありますが,同じ画像所見があっても症状のない人もいます.

痛みやしびれの範囲,筋力,腱反射,感覚,歩行を確認し,椎間板の画像だけで症状を説明し切らないことが重要です.

腰椎だけでなく骨盤と下肢の使い方をみる

長生医学的には,腰椎下部の状態に加え,骨盤,仙骨,股関節,下肢,腹部の緊張と動作の連鎖を確認します.痛みを避けて片側へ体重をかける状態が続くと,腰背部や臀部の緊張が増えることがあります.

神経根への圧迫や炎症が強い時期には,局所へ負担を加えず,医療機関の診断と経過を優先します.

施術前に確認すること

  • 脚の痛みやしびれの範囲と,腰痛との時間的な関係
  • つま先立ち,かかと立ち,階段昇降での筋力
  • 咳,くしゃみ,前屈,座位で悪化するか
  • 排尿・排便,会陰部の感覚に変化がないか
  • 画像検査,服薬,注射,手術歴と現在の治療方針

症状を増やさない範囲で全身の負担を整える

施術が適すると判断できる場合に,腰椎を強く捻ることを避け,骨盤,股関節,胸郭,下肢の動きを確認します.痛みやしびれが末梢へ強く広がる反応がないかを見ながら進めます.

急性期には,無理に可動域を広げるより,楽に保てる姿勢と起き上がり方を整えることを優先します.

日常生活で意識すること

座り続ける時間を短くし,立ち上がる際は腰を丸めたまま勢いをつけず,机や肘掛けを利用します.物を持つときは身体へ近づけ,腰だけで曲げず股関節と膝を使います.

寝たきりを続けるのではなく,医師の指示と症状に合わせて短い歩行から活動を保ちます.

参考資料

  1. Kreiner DS, Hwang SW, Easa JE, et al. An evidence-based clinical guideline for the diagnosis and treatment of lumbar disc herniation with radiculopathy. The Spine Journal. 2014;14(1):180-191. doi:10.1016/j.spinee.2013.08.003
  2. Deyo RA, Mirza SK. Herniated lumbar intervertebral disk. New England Journal of Medicine. 2016;374:1763-1772. doi:10.1056/NEJMcp1512658

医療機関での確認を優先する状態

次の状態では,神経への強い圧迫や別の疾患を確認するため,速やかな受診が必要です.

  • 尿が出にくい,失禁する,便をもらす
  • 会陰部や肛門周囲の感覚が鈍い
  • 脚の筋力低下が急に進む,足首が上がらない
  • 両脚に強い痛みやしびれがある
  • 発熱,体重減少,がん・感染症の既往を伴う腰痛
  • 転倒や事故の後に強い腰痛が続く