症状別解説

末梢性顔面神経麻痺

末梢性顔面神経麻痺では,顔の片側で額,まぶた,口元を動かしにくくなります.発症時刻と顔以外の症状を確認することが重要です.

顔面神経麻痺の現れ方

額へしわを寄せにくい,目を閉じにくい,口角が下がる,水がこぼれる,味覚が変わるなどの症状が現れます.耳の周囲の痛みや,音が強く響く感じを伴うこともあります.

顔面神経は脳から出て側頭骨内を通り,顔の筋肉へ分布します.原因が明らかでないもの,ウイルス感染に関連するもの,耳の病気,外傷,腫瘍などに伴うものがあります.

顔面だけでなく頚部と耳周囲を見る

長生医学的には,顔面だけを局所的に刺激するのではなく,頚椎第1から第4付近,後頭部,耳の周囲,顎,肩の状態とのつながりを見ます.左右の顔の動きだけでなく,頚部の緊張と姿勢を確認します.

顔の麻痺によって食事,発音,まばたきが変化すると,顎や首へ別の緊張が生じます.その代償も含めて身体全体を捉えます.

施術前に確認すること

発症した側と顔の動きだけでなく,次の点を確認します.

  • 発症した日時と,急に始まったか徐々に始まったか
  • 額,まぶた,口角の動きと左右差
  • 耳の痛み,発疹,味覚,聴覚の変化
  • 腕や脚の力,言葉,歩行,頭痛の有無
  • 頚椎,後頭部,耳周囲,顎の緊張

頚部と顔面の反応を見ながら施術する

施術では,原因と経過が確認され,施術が適当と判断できる段階で,頚椎上部,後頭部,耳周囲,肩甲帯の状態を静かに確認します.顔面へ強い摩擦や圧迫を加えず,表情筋の反応と本人の感覚を見ながら進めます.

目を閉じにくい場合は,施術より先に角膜を守る対応が必要となることがあります.顔の動きだけを追わず,食事,睡眠,疲労の状態も確認します.

日常生活で意識すること

目を閉じにくいと乾燥や異物による傷が起こりやすいため,風やほこりを避けます.食事では,麻痺側に食べ物が残っていないか確認し,口腔内を清潔にします.

顔の筋肉を強く揉んだり,無理に大きな表情を何度も繰り返したりせず,経過を記録します.発症日,写真,目の閉じ方などを残すと変化を比較しやすくなります.

ちなみに,急性の末梢性顔面神経麻痺では

発症初期の治療時期が経過に関係するため,医学的には早期の評価と眼の保護が重視されています.また,額の動き,顔以外の神経症状,耳周囲の発疹などを確認し,別の原因を見分けます.

参考資料

  1. Baugh RF, Basura GJ, Ishii LE, et al. Clinical Practice Guideline: Bell's Palsy. Otolaryngology-Head and Neck Surgery. 2013;149(3 Suppl):S1-S27. doi:10.1177/0194599813505967
  2. Gronseth GS, Paduga R. Evidence-based guideline update: steroids and antivirals for Bell palsy. Neurology. 2012;79(22):2209-2213. doi:10.1212/WNL.0b013e318275978c

医療機関での確認を優先する状態

次のような状態では,症状の経過と身体の状態から,画像検査,血液検査,薬物療法,手術,救急処置などを優先すべきと判断し,施術を控えて受診をお勧めします.

  • 顔の麻痺と同時に腕や脚へ力が入らない
  • ろれつが回らない,言葉が出にくい,歩けない
  • 突然の激しい頭痛,意識状態の変化を伴う
  • 耳の強い痛みや水疱,急な難聴,強いめまいがある
  • 目を閉じられず,強い乾燥,痛み,充血がある
  • 麻痺が徐々に進行する,繰り返す,両側に現れる