症状別解説

むち打ち症

むち打ち症は,追突事故などで頚部が急に伸展・屈曲され,首から背中へ負担が加わった状態を表します.症状が遅れて現れることがあります.

事故直後だけで判断しない

首の痛み,肩や背中の張り,頭痛,腕のしびれ,めまい,吐き気などが現れます.事故直後は緊張が強く,数時間から翌日にかけて症状を自覚する場合があります.

外力の方向,座席や頭部の位置,衝突速度,身体の向きによって,負担のかかり方は異なります.症状の強さだけで損傷の程度を決めることはできません.

頚椎だけでなく身体全体の反応を見る

長生医学的には,むち打ち症を頚部の過伸展と屈曲によって生じる状態として捉え,頚椎第1から第7,胸椎,肩甲骨,骨盤までを確認します.外力を受けた瞬間に身体がどのように動いたかを考えます.

痛みを避ける姿勢が続くと,胸郭が動きにくくなり,腰や反対側の肩へ負担が広がります.事故後の睡眠,呼吸,歩行,集中力の変化も見ます.

施術前に確認すること

事故の状況と現在の症状を具体的に確認します.

  • 事故の日時,衝突方向,身体と頭の向き
  • 意識を失ったか,記憶が途切れたか
  • 頭痛,吐き気,めまい,視覚,聴覚の変化
  • 腕や手のしびれ,筋力,歩行の変化
  • 頚椎,胸椎,肩甲骨,骨盤の動きと痛み

外傷後の状態に合わせて施術する

施術では,外傷の状態が確認され,施術が適当と判断できる段階で,頚椎だけを強く動かさず,胸椎,肩甲骨,肋骨,骨盤を含めて静かに施術します.事故後早期は刺激量を抑え,痛みや神経症状が増えないことを確認します.

時間が経過しても,強い矯正や急な首の回旋を行うのではなく,動ける範囲,呼吸,姿勢,日常動作の変化を見ながら進めます.

日常生活で意識すること

痛みが強い間は,長時間同じ姿勢を続けず,短い間隔で姿勢を変えます.首を守ろうとして肩へ力を入れ続けないよう,肘や腕を支えます.

症状,睡眠,仕事への影響を日ごとに記録します.自分で首を勢いよくひねる操作や,痛みを我慢した強いストレッチは避けてください.

ちなみに,むち打ち後の経過では

痛みの強さだけでなく,事故直後の強い不安,活動への警戒,睡眠の乱れなどが長期化と関係することが報告されています.身体所見と生活への影響を合わせ,無理な安静と無理な活動のどちらにも偏らないことが重要です.

参考資料

  1. Côté P, Wong JJ, Sutton D, et al. Management of neck pain and associated disorders: a clinical practice guideline from the OPTIMa Collaboration. European Spine Journal. 2016;25:2000-2022. doi:10.1007/s00586-016-4467-7
  2. Sterling M. Physiotherapy management of whiplash-associated disorders. Journal of Physiotherapy. 2014;60(1):5-12. doi:10.1016/j.jphys.2013.12.004

医療機関での確認を優先する状態

次のような状態では,症状の経過と身体の状態から,画像検査,血液検査,薬物療法,手術,救急処置などを優先すべきと判断し,施術を控えて受診をお勧めします.

  • 意識を失った,記憶が途切れた,強い眠気がある
  • 激しい頭痛,繰り返す嘔吐,けいれんがある
  • 腕や脚の筋力低下,歩行困難,排尿・排便異常がある
  • 胸部や腹部の強い痛み,息苦しさがある
  • 首の中央に強い圧痛があり,動かせない
  • 症状が急速に悪化し,通常とは明らかに異なる経過を示す