顔面の痛みを三叉神経の分布から考える
三叉神経は,額と眼の周囲,上顎,下顎の感覚を担う神経です.典型的な三叉神経痛では,数秒から2分ほどの短い激痛が繰り返され,痛みのない時間をはさむことがあります.一方,持続する鈍痛,感覚の低下,発疹,腫れを伴う場合は,別の病気も考える必要があります.
顔面痛には,歯科疾患,副鼻腔炎,帯状疱疹,顎関節の問題,片頭痛なども含まれます.痛む場所だけで判断せず,発作の長さ,誘因,感覚の変化を整理します.
頚部や顎の緊張を全身の状態とともにみる
長生医学的には,顔面の神経症状を局所だけで捉えず,上部頚椎,後頭部,顎,肩甲帯の緊張,呼吸や姿勢との関連を確認します.強い痛みを避けるために顎を固めたり,首を傾けたりしていると,二次的な筋緊張が加わることがあります.
ただし,頚部の緊張が三叉神経痛の原因であると決めつけることはできません.神経学的な診断と治療を優先しながら,併存する身体の負担を分けて考えます.
施術前に確認すること
- 痛む範囲が額,上顎,下顎のどこにあるか
- 1回の痛みが何秒続き,1日に何回起こるか
- 洗顔,咀嚼,会話,冷風など明確な誘因があるか
- 顔のしびれ,筋力低下,発疹,発熱,歯痛がないか
- 服薬歴,歯科・耳鼻科・神経内科での検査歴
痛みを誘発しない範囲で身体の緊張を整える
医療機関での評価を受け,施術が適すると判断できる場合に,顔の痛む場所を強く押さず,後頭部,頚部,肩甲帯,顎周囲の過度な緊張を確認します.姿勢や呼吸に伴う変化を見ながら,刺激量を抑えて進めます.
目的は,神経そのものを直接治すと説明することではなく,痛みに伴って生じた防御的な緊張や動きにくさを軽減し,日常生活の負担を整えることです.
日常生活で意識すること
発作を誘発する行動を記録し,食事は急がず,極端に熱い物や冷たい物を避けます.冷風がきっかけになる場合は,マスクや襟元で顔を保護します.
自己判断で薬を中断せず,痛みが続く場合は神経内科,脳神経外科,歯科口腔外科などで相談します.
参考資料
- Bendtsen L, Zakrzewska JM, Abbott J, et al. European Academy of Neurology guideline on trigeminal neuralgia. European Journal of Neurology. 2019;26(6):831-849. doi:10.1111/ene.13950
- Cruccu G, Finnerup NB, Jensen TS, et al. Trigeminal neuralgia: New classification and diagnostic grading for practice and research. Neurology. 2016;87(2):220-228. doi:10.1212/WNL.0000000000002840
医療機関での確認を優先する状態
次のような状態では,神経,血管,感染症,眼・歯科領域の病気を確認するため,施術を控えて受診をお勧めします.
- 初めて経験する強い顔面痛,または急速に悪化する痛み
- 顔の感覚低下,顔面の動かしにくさ,手足のしびれや脱力を伴う
- 顔や耳の周囲に水疱や発疹がある
- 発熱,顔面の腫れ,強い歯痛,開口障害がある
- 視力低下,眼の充血,強い眼痛を伴う
- 新しい激しい頭痛,意識や言葉の異常を伴う