肋骨に沿って現れる痛み
深呼吸,咳,くしゃみ,身体をひねる動作で痛みが強くなることがあります.肋間神経は胸椎から出て肋骨の下縁に沿って走るため,背中から胸の前方へ痛みが広がることがあります.
筋肉や肋骨周囲の負担,帯状疱疹,肋骨損傷,胸椎の病変など,背景は一つではありません.胸部の痛みは心臓,肺,血管,消化器などから現れる場合もあるため,経過の確認が重要です.
胸椎と肋骨の動きを見る
長生医学的には,肋間神経痛を第5から第9肋間に現れやすい痛みとして捉え,胸椎と肋骨,肩甲骨,呼吸の動きを一続きに見ます.痛む線だけを追うのではなく,胸郭の広がりと体幹の回旋を確認します.
痛みを避けて浅い呼吸が続くと,頚部や肩へ力が入り,背中全体が硬くなることがあります.呼吸を含めた全身の反応を見ます.
施術前に確認すること
胸部の痛みでは,痛みの性質と伴う症状を丁寧に確認します.
- 発症のきっかけ,外傷,咳,発熱の有無
- 痛みが肋骨に沿うか,胸の中央や肩・腕へ広がるか
- 深呼吸,咳,体幹の回旋,押圧による変化
- 発疹,皮膚の過敏,しびれの有無
- 胸椎,肋骨,肩甲骨の動きと呼吸の左右差
胸郭の動きを妨げないよう施術する
施術では,胸椎,肋骨,肩甲骨,頚部の状態を確認し,呼吸で胸郭が動ける範囲へ穏やかに働きかけます.痛む肋間へ強く押し込まず,呼吸の深さと痛みの反応を見ながら施術します.
体幹を大きくひねる操作や,肋骨へ強い圧を加える操作は避けます.骨の状態や既往歴に応じて刺激量を変えます.
日常生活で意識すること
咳やくしゃみで痛む場合は,胸郭を手やクッションで軽く支えます.痛みを消そうとして硬いボールを肋骨へ押し当てることは避けてください.
呼吸が可能な範囲で,息を止めずにゆっくり吐きます.発疹が現れた場合は,触れたり温めたりする前に経過を確認します.
参考資料
- Johnson RW, Rice ASC. Clinical practice: Postherpetic neuralgia. New England Journal of Medicine. 2014;371(16):1526-1533. doi:10.1056/NEJMcp1403062
- Heneghan NR, Rushton A. Understanding why the thoracic region is the “Cinderella” region of the spine. Manual Therapy. 2016;21:274-276. doi:10.1016/j.math.2015.06.010
医療機関での確認を優先する状態
次のような状態では,症状の経過と身体の状態から,画像検査,血液検査,薬物療法,手術,救急処置などを優先すべきと判断し,施術を控えて受診をお勧めします.
- 胸の圧迫感,息苦しさ,冷汗,吐き気を伴う
- 突然,胸や背中に引き裂かれるような強い痛みが起こった
- 高熱,血痰,強い咳,呼吸困難がある
- 外傷後に深呼吸できないほど痛む
- 帯状の痛みに発疹や水疱が現れた
- 安静にしていても痛みが増し,通常と異なる経過を示す