症状別解説

不眠症

不眠症には,寝つきにくい,途中で何度も目が覚める,早く目が覚める,眠った感じがしないなど,複数の現れ方があります.

眠れない状態を分けて考える

眠れない夜が一時的にあることと,日中の生活へ影響する不眠が続くことは分けて考えます.生活時間,光,騒音,カフェイン,飲酒,痛み,呼吸,気分,薬などが関係します.

眠ろうと力むほど身体の緊張が増し,時計を確認するたびに不安が強くなることがあります.夜の問題だけでなく,日中の活動量,昼寝,起床時刻まで含めて見ます.

神経の興奮と全身の緊張を見る

長生医学的には,不眠を睡眠だけの問題に限定せず,頚部から脊柱にかけての緊張,神経の興奮,ほかの不調に伴う状態として捉えます.寝つき,途中覚醒,朝の疲労感を一つの流れとして確認します.

呼吸が浅く,顎や肩へ力が入り続けている場合,寝床に入っても身体が休息へ切り替わりにくいことがあります.首,胸郭,腹部,骨盤の緊張を見ます.

施術前に確認すること

睡眠時間だけでなく,日中への影響と生活のリズムを確認します.

  • 寝床に入る時刻,眠り始めるまでの時間,起床時刻
  • 途中覚醒,早朝覚醒,昼寝の有無
  • いびき,無呼吸,脚の不快感,夜間の痛み
  • カフェイン,飲酒,服薬,画面を見る時間
  • 頚部,胸郭,呼吸,全身の緊張

休息へ切り替わりやすい状態を目指す

施術では,頚椎から胸椎,腰部までの緊張を確認し,呼吸が無理なく行える姿勢へ働きかけます.眠らせることを直接の操作目標にせず,身体が過度に力を入れ続けている部位を見つけ,刺激量を抑えて施術します.

施術中の呼吸,表情,手足の緊張,脈拍などの反応を確認し,興奮を強めるような強い刺激は避けます.

日常生活で意識すること

起床時刻を大きく変えず,朝は光を浴びます.眠くないまま早く寝床へ入り続けるより,眠気が現れてから寝床へ入り,眠れない時間が長いときは一度静かな場所へ移ります.

夕方以降のカフェインと,寝酒としての飲酒を見直します.寝床で仕事や動画視聴を続けず,時計を何度も確認しない環境を作ります.

ちなみに,慢性不眠では

近年の指針では,睡眠衛生だけでなく,認知行動療法を中心とした体系的な対応が第一選択として重視されています.睡眠時間を増やすことだけでなく,寝床と覚醒の結びつきを弱め,生活のリズムを整えることが含まれます.

参考資料

  1. Riemann D, Espie CA, Altena E, et al. The European Insomnia Guideline: an update on the diagnosis and treatment of insomnia 2023. Journal of Sleep Research. 2023;32(6):e14035. doi:10.1111/jsr.14035
  2. Qaseem A, Kansagara D, Forciea MA, Cooke M, Denberg TD. Management of Chronic Insomnia Disorder in Adults. Annals of Internal Medicine. 2016;165(2):125-133. doi:10.7326/M15-2175

医療機関での確認を優先する状態

次のような状態では,症状の経過と身体の状態から,画像検査,血液検査,薬物療法,手術,救急処置などを優先すべきと判断し,施術を控えて受診をお勧めします.

  • 強い日中の眠気で運転や仕事の安全が保てない
  • 大きないびき,呼吸の停止,夜間の息苦しさがある
  • 気分の落ち込みや不安が強く,日常生活を保てない
  • 眠らなくても平気な状態と強い活動性が続く
  • 脚の不快感,痛み,頻尿など別の症状で眠れない
  • 薬や飲酒の量が増え,自分で調整できない