症状別解説

肩こり

肩こりは,首から肩,肩甲骨周囲へ現れる重さ,張り,鈍い痛みなどの総称です.肩だけを揉めばよい状態とは限りません.

肩こりの現れ方

首の付け根が重い,肩甲骨の内側が張る,頭が重い,腕を上げ続けると疲れるなど,感じ方はさまざまです.僧帽筋や肩甲挙筋などは頭と腕を支えるために働き続け,同じ姿勢が続くほど一部へ負担が集中します.

肩こりは病名ではなく,自覚症状として用いられる言葉です.筋肉の疲労だけでなく,頚椎や胸椎の動き,肩甲骨の位置,眼精疲労,噛みしめ,睡眠不足,精神的な緊張などを含めて考えます.

肩だけに原因を求めない

腕を前へ出す仕事,片側で荷物を持つ習慣,胸郭を動かしにくい姿勢が続くと,肩甲骨の動きが小さくなり,首と肩の筋肉が代わりに働き続けます.腰や骨盤の支えが不安定なときも,上半身で姿勢を保とうとして肩へ緊張が集まることがあります.

長生医学的には,頚椎第7から上部胸椎,肩甲骨周囲を重視しながら,肩こりを全身状態の表れとして捉えます.左右の肩の高さ,胸郭の広がり,呼吸,腕の使い方に加え,年齢,体力,既往歴,生活上の負担も確認します.

施術前に確認すること

肩の硬さだけでなく,次のような点を確認します.

  • いつから続き,仕事や休養でどのように変わるか
  • 首を動かしたときの痛み,腕や手のしびれの有無
  • 肩関節と肩甲骨の動き,左右の肩の高さ
  • 胸椎,肋骨,骨盤の動きと呼吸の深さ
  • 睡眠,視作業,噛みしめ,運動量,過去のけが

脊柱と肩甲骨の動きをみながら施術する

施術では,頚椎から胸椎へ続く状態を確認し,肩甲骨,鎖骨,肋骨,腕の動きが一続きになるよう施術を組み立てます.凝っている部分だけを繰り返し強く押すのではなく,緊張の分布と左右差を見ながら,必要な部位へ刺激を加えます.

施術中は首の動き,腕の上げやすさ,呼吸の変化などを確認します.刺激量は年齢,体力,症状の期間に合わせ,翌日に強い負担を残すような施術は避けます.

日常生活で意識すること

肘を机や肘掛けで支えると,腕の重さを肩だけで支えずに済みます.画面を身体の正面に置き,資料やスマートフォンを片側へ固定しないようにします.

「良い姿勢」を長時間固めるより,30分から60分ごとに姿勢を変え,肩甲骨を小さく動かす方が現実的です.温めて楽になる場合は入浴などを利用し,痛みが増す運動は控えます.

ちなみに,首と肩の症状では

近年の診療指針では,姿勢や画像所見だけで症状を説明せず,痛みの経過,機能,仕事や生活への影響を合わせて評価することが重視されています.肩こりも,一つの筋肉や一つの椎骨だけで判断せず,全体の動きと負担の重なりを見る必要があります.

参考資料

  1. Blanpied PR, Gross AR, Elliott JM, et al. Neck Pain: Revision 2017. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2017;47(7):A1-A83. doi:10.2519/jospt.2017.0302
  2. Côté P, Wong JJ, Sutton D, et al. Management of neck pain and associated disorders: a clinical practice guideline from the OPTIMa Collaboration. European Spine Journal. 2016;25:2000-2022. doi:10.1007/s00586-016-4467-7

医療機関での確認を優先する状態

次のような状態では,症状の経過と身体の状態から,画像検査,血液検査,薬物療法,手術,救急処置などを優先すべきと判断し,施術を控えて受診をお勧めします.

  • 胸の痛み,息苦しさ,冷汗,強い吐き気を伴う
  • 腕や手の筋力低下,感覚の変化が急速に進む
  • 発熱,強い倦怠感,原因不明の体重減少を伴う
  • 転倒や事故のあとから強い痛みが続く
  • 安静時や夜間にも痛みが強く,通常の肩こりと経過が明らかに異なる