背中の痛みと張り
肩甲骨の間が重い,片側の肋骨沿いが痛む,長く座ると背中が張る,深呼吸で痛むなど,現れ方はさまざまです.胸椎と肋骨は胸郭をつくり,呼吸や腕の動きに合わせて動きます.
長時間の前かがみ,片手作業,咳,運動,睡眠姿勢などで負担が重なることがあります.一方,心臓,肺,血管,消化器などの状態が背中の痛みとして現れる場合もあります.
胸椎,肋骨,肩甲骨を一続きに見る
長生医学的には,背中の痛みや張りを,肩こり,肋間神経痛,胸郭周囲の症状と関連づけ,胸椎,肋骨,肩甲骨,頚椎,腰椎までを確認します.呼吸による胸郭の広がりと左右差を重視します.
肩甲骨の内側が痛くても,原因がその部分の筋肉だけとは限りません.首や腰が動きにくいことで,胸椎が代わりに負担を受けていることもあります.
施術前に確認すること
背部痛では,動作と呼吸,内臓症状との関係を確認します.
- 発症のきっかけ,外傷,咳,発熱の有無
- 深呼吸,体幹の回旋,腕の動きによる変化
- 胸痛,息苦しさ,食事との関係
- 発疹,しびれ,夜間痛の有無
- 胸椎,肋骨,肩甲骨,頚椎,腰椎の動き
呼吸と姿勢を妨げないよう施術する
施術では,胸椎,肋骨,肩甲骨を確認し,頚椎と腰椎を含めて施術を組み立てます.背中の硬い場所へ強く押し込むのではなく,呼吸の深さ,肩甲骨の動き,体幹の回旋を見ながら刺激します.
骨粗鬆症,圧迫骨折の既往,抗凝固薬の使用などがある場合は,刺激量を大きく下げます.
日常生活で意識すること
背中を無理に反らせた姿勢を固定するより,30分から60分ごとに姿勢を変えます.肘を机や肘掛けで支えると,肩甲骨周囲の負担を減らせます.
息をゆっくり吐きながら両腕を前へ伸ばし,背中を軽く広げる運動は,痛みが増えない範囲で行います.硬い器具を背中へ当てて強く押すことは避けます.
参考資料
- Finucane LM, Downie A, Mercer C, et al. International Framework for Red Flags for Potential Serious Spinal Pathologies. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2020;50(7):350-372. doi:10.2519/jospt.2020.9971
- Heneghan NR, Rushton A. Understanding why the thoracic region is the “Cinderella” region of the spine. Manual Therapy. 2016;21:274-276. doi:10.1016/j.math.2015.06.010
医療機関での確認を優先する状態
次のような状態では,症状の経過と身体の状態から,画像検査,血液検査,薬物療法,手術,救急処置などを優先すべきと判断し,施術を控えて受診をお勧めします.
- 胸痛,呼吸困難,冷汗,強い吐き気を伴う
- 突然,引き裂かれるような強い胸背部痛が起こった
- 高熱,血痰,強い咳がある
- 転倒後に強く痛み,身体を動かせない
- 夜間や安静時にも増悪し,原因不明の体重減少がある
- 発疹と痛みが同じ範囲に現れた
- がん,骨粗鬆症,感染症の既往があり,通常と異なる経過を示す