症状別解説

腰痛

腰痛は,腰の一部に痛みを感じる状態の総称です.起こり方,動作との関係,脚の症状の有無によって,確認すべき内容が変わります.

腰痛の現れ方

重い物を持った瞬間に起こる腰痛,長時間座ったあとに伸びにくくなる腰痛,朝の動き始めに強い腰痛などがあります.筋肉,筋膜,椎間関節,椎間板など複数の組織が関係するため,痛む一点だけで原因を決めることはできません.

痛みが腰に限られるのか,臀部や脚へ広がるのか,咳やくしゃみで変化するのか,安静時にも続くのかを分けて考えます.動作を避ける期間が長いと,痛みへの警戒が強まり,身体全体の動きが小さくなることもあります.

腰へ負担が集まる背景

同じ姿勢の継続,前かがみとひねりを伴う作業,急な運動量の増加,睡眠不足などが重なると,腰部だけでなく胸椎,股関節,骨盤の動きが低下し,腰が代わりに働き続けます.

長生医学的には,腰椎第3から第5付近,腰椎と仙骨の境目,骨盤の状態を重視します.腰痛を局所の筋肉だけの問題とせず,頚椎から骨盤までの脊柱,姿勢,歩行,腹部や下肢の緊張を一続きに見ます.

施術前に確認すること

腰痛という名称だけで同じ施術を行わず,次の点を確認します.

  • 発症の時期ときっかけ,外傷や発熱の有無
  • 前屈,後屈,ひねり,立ち上がりでの変化
  • 臀部や脚への痛み,しびれ,筋力低下の有無
  • 腰椎,骨盤,股関節,胸椎の動きと左右差
  • 仕事,睡眠,運動,既往歴,服薬の状況

腰だけに集中しない施術

施術では,腰椎と腰仙部を確認したうえで,骨盤,股関節,胸椎,肩甲帯まで含めて施術を組み立てます.痛む場所へ強く押し込むのではなく,身体を起こす,寝返る,立つ,歩くといった動作の変化を見ながら刺激量を調整します.

急性期と慢性期では身体の反応が異なります.動ける範囲を無理に広げず,緊張が集中している部位と,働きにくくなっている部位の両方を確認します.

日常生活で意識すること

痛みが許す範囲では,長期間寝たままにせず,短い歩行や姿勢の変更を繰り返します.座る時間が長い場合は,30分から60分ごとに立ち上がり,腰を反らすことだけでなく,股関節を動かします.

重い物を持つときは,物を身体から離さず,足の向きを変えてから持ち上げます.同じ動作で痛みが繰り返す場合は,作業台の高さや持ち方も見直します.

ちなみに,腰痛研究では

腰痛の多くは,画像だけで痛みの原因を一つに特定できません.近年は,身体所見,生活上の負担,心理的な警戒,活動量などを合わせて捉え,必要以上の安静や一律の対応を避ける考え方が重視されています.

参考資料

  1. Hartvigsen J, Hancock MJ, Kongsted A, et al. What low back pain is and why we need to pay attention. The Lancet. 2018;391(10137):2356-2367. doi:10.1016/S0140-6736(18)30480-X
  2. Foster NE, Anema JR, Cherkin D, et al. Prevention and treatment of low back pain: evidence, challenges, and promising directions. The Lancet. 2018;391(10137):2368-2383. doi:10.1016/S0140-6736(18)30489-6

医療機関での確認を優先する状態

次のような状態では,症状の経過と身体の状態から,画像検査,血液検査,薬物療法,手術,救急処置などを優先すべきと判断し,施術を控えて受診をお勧めします.

  • 転倒や事故のあとに強い痛みが続く
  • 発熱,原因不明の体重減少,著しい全身状態の悪化を伴う
  • 安静時や夜間にも激しい痛みが続く
  • 両脚のしびれや筋力低下が急速に進む
  • 尿が出にくい,失禁,便失禁,会陰部の感覚低下がある
  • がん,感染症,骨粗鬆症などの既往があり,経過が通常と異なる