症状別解説

疲労・だるさ

疲労は,身体や精神の活動を続ける余裕が少なくなり,休息を求めている状態として現れます.単なる気の持ちようとして扱いません.

疲労の現れ方

運動や仕事のあとに一時的に感じる疲労もあれば,休んでも抜けず,朝から重い,集中できない,身体を動かすのがおっくうと感じる疲労もあります.筋肉の疲れ,睡眠不足,精神的負担,感染症,貧血,内分泌や代謝の異常,薬の影響など背景はさまざまです.

医学的には,活動によって能力が低下する「疲れやすさ」と,本人が感じる「疲労感」は一致しないことがあります.筋肉,脳,神経,心理状態,生活環境を含む複数の仕組みが関係します.

負担と回復の釣り合いを見る

休養よりも負担が上回る状態が続くと,疲労は翌日へ持ち越されます.長時間の同じ姿勢,反復作業,睡眠不足,不規則な生活,精神的な緊張,運動不足や過度の運動が重なると,呼吸が浅くなり,首,背中,腰,骨盤周囲へ緊張が偏ります.

長生医学的には,疲労を一部の筋肉だけの問題に限定せず,神経系の興奮と疲れ,脊柱周囲の緊張,身体全体の働きに余裕が少なくなった状態として捉えます.精神的・身体的な過労と,仕事や歩行で消耗しやすい状態を合わせて見ます.

施術前に確認すること

疲れた場所だけでなく,疲労の経過と全身状態を確認します.

  • いつから続き,休息で変化するか
  • 睡眠,食欲,体重,便通,月経などの変化
  • 息切れ,動悸,発熱,痛み,眠気の有無
  • 仕事,運動,介護,精神的負担の変化
  • 脊柱,姿勢,呼吸,身体の動き,左右の緊張差

全身の余裕を取り戻すよう施術する

施術では,頚椎から骨盤までの脊柱,呼吸,姿勢,手足の緊張を確認し,負担が集中している部位へ穏やかに働きかけます.疲労を強い刺激で打ち消すのではなく,施術中の呼吸,表情,脈拍,身体の反応を見ながら刺激量を調整します.

体力が低下しているときは,通常より短い施術や少ない刺激が適する場合があります.施術後に活動を増やしすぎず,経過を見ます.

日常生活で意識すること

疲労が強い時期は,運動で無理に打ち消さず,まず睡眠時間と休息を確保します.休日にまとめて寝るだけでなく,数日間,起床時刻を大きく変えずに就寝を少し早めます.

長時間同じ姿勢が続く仕事では,30分から60分ごとに立ち上がり,数回ゆっくり呼吸しながら肩や股関節を動かします.運動後の疲れが翌々日まで強く残る場合は,運動量を下げます.

ちなみに,疲労研究では

以前は乳酸が疲労物質として単純に扱われることがありましたが,現在は乳酸だけを原因とする説明は適切ではありません.末梢の筋肉と,中枢の脳・神経系の変化を分けながら,主観的な疲労感との関係が研究されています.

参考資料

  1. Enoka RM, Duchateau J. Translating Fatigue to Human Performance. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2016;48(11):2228-2238. doi:10.1249/MSS.0000000000000929
  2. Allen DG, Lamb GD, Westerblad H. Skeletal Muscle Fatigue: Cellular Mechanisms. Physiological Reviews. 2008;88(1):287-332. doi:10.1152/physrev.00015.2007

医療機関での確認を優先する状態

次のような状態では,症状の経過と身体の状態から,画像検査,血液検査,薬物療法,手術,救急処置などを優先すべきと判断し,施術を控えて受診をお勧めします.

  • 突然始まった強いだるさに,胸痛や呼吸困難を伴う
  • 意識がぼんやりする,急に筋力が低下する
  • 高熱,黒い便,出血,強い腹痛がある
  • 原因不明の体重減少,食欲低下が続く
  • 日常生活を保てないほどの眠気や気分の落ち込みがある
  • 十分に休んでも数週間以上続き,悪化している