首から手指まで続く神経の経路を確認する
頚椎の神経根が刺激されると,首や肩甲骨周囲の痛みに加え,腕や手指へ放散する痛み,しびれ,筋力低下が現れることがあります.一方,肘部管症候群や手根管症候群など,末梢神経の圧迫でも似た症状が起こります.
痛みの場所だけでは区別できないため,首の動き,肩や肘の位置,手指の感覚,握力,反射,夜間症状を確認します.
頚椎と肩甲帯の連動をみる
長生医学的には,上肢の神経症状と頚椎下部から胸椎上部,鎖骨,肩甲骨,腋窩周囲の緊張との関連を重視します.腕をかばって肩をすくめる姿勢が続くと,首や胸郭の動きも小さくなります.
神経障害の部位を手技だけで確定することはできません.筋力低下や感覚障害がある場合は,医療機関での神経学的評価を優先します.
施術前に確認すること
- 痛みやしびれが肩,前腕,手のどの指へ広がるか
- 首,肩,肘,手首の動きで変化するか
- 物を落とす,ボタンを掛けにくいなど筋力低下がないか
- 夜間に悪化するか,仕事や睡眠姿勢と関係するか
- 糖尿病,甲状腺疾患,外傷,頚椎疾患の既往
神経を圧迫しない姿勢と動きを整える
施術が適すると判断できる場合に,頚部,胸郭,肩甲帯,上肢の緊張と動きを確認します.しびれを強く再現させる方向へ無理に動かさず,反応を見ながら可動範囲を整えます.
腕だけを扱うのではなく,頭の位置,胸椎の動き,肩甲骨の支え,肘や手首の使い方を含めて,神経周囲へ加わる負担を減らすことを目指します.
日常生活で意識すること
長時間のうつむき姿勢を避け,肘を机や肘掛けへ強く押しつけないようにします.キーボードやマウスは,肩をすくめずに操作できる高さへ調整します.
しびれが強くなる運動を繰り返さず,症状の範囲や握力の変化を記録します.
参考資料
- Caridi JM, Pumberger M, Hughes AP. Cervical radiculopathy: a review. HSS Journal. 2011;7(3):265-272. doi:10.1007/s11420-011-9218-z
- Childress MA, Becker BA. Nonoperative management of cervical radiculopathy. American Family Physician. 2016;93(9):746-754.
医療機関での確認を優先する状態
次のような状態では,脊髄障害,重い神経障害,循環器疾患などを確認する必要があります.
- 腕や手の筋力低下が進んでいる,物を頻繁に落とす
- 両手の不器用さ,歩行のふらつき,脚のしびれを伴う
- 排尿・排便の異常がある
- 胸痛,息苦しさ,冷汗とともに左腕が痛む
- 外傷後に強い首の痛みや腕のしびれが出た
- 腕が急に冷たい,白い,紫色になる,または脈が触れにくい