肩の痛みと動かしにくさ
腕を上げる、服の袖へ腕を通す、髪を結ぶ、背中へ手を回すなどの動作が難しくなります。夜間に寝返りで痛みが強まり、目が覚めることもあります。
肩関節周囲炎や癒着性関節包炎と呼ばれることがありますが、腱板損傷、石灰沈着、変形性関節症、頚部由来の痛みなども似た症状を示します。肩が痛いという訴えだけで同じ状態とは判断できません。
経過によって対応を変える
痛みが増していく時期、痛みと運動制限が続く時期、少しずつ動かしやすくなる時期があります。同じ動作でも、痛みが強い時期に無理に動かすことと、落ち着いた時期に動きを取り戻すことでは意味が異なります。
長生医学的には、肩関節の運動制限を中心に、腕を後ろへ回す動作の困難さ、上腕へ広がる痛み、肩甲骨の動きを確認します。肩だけでなく、頚椎、胸椎、肋骨、鎖骨、骨盤を含む全身の関連から見ます。
施術前に確認すること
肩関節を動かせる範囲と痛みの時期を確認します。
- いつから始まり、痛みと動かしにくさのどちらが先だったか
- 自分で動かす範囲と、他者が静かに動かした範囲の違い
- 腕を前、上、横、後ろへ動かしたときの痛み
- 肩甲骨、鎖骨、胸椎、頚椎の動き
- 転倒、糖代謝の問題、甲状腺疾患などの既往
肩甲骨と胸郭を含めて施術する
施術では、肩関節だけを無理に広げず、肩甲骨、胸椎、肋骨、頚椎、腕の状態を確認して施術します。急性期は痛みを強めない刺激量を選び、安定期以降は肩甲骨と上腕骨の動きが連動する範囲を少しずつ広げます。
強い痛みを我慢して関節を動かすことを目的にせず、施術前後の可動範囲、夜間痛、日常動作の変化を確認します。
日常生活で意識すること
痛みが強い時期は、肘の下へ枕やクッションを入れ、腕の重さを支えます。痛みが落ち着いている範囲では、机の上で腕を滑らせるなど、重力の負担が少ない動きから始めます。
毎回痛みを確認するように無理に腕を上げると、肩を守る緊張が強くなることがあります。回数を決めて行い、運動後に痛みが長く増す場合は量を減らします。
ちなみに四十肩・五十肩の経過では
肩の痛みと運動制限は数か月以上続くことがあり、時期によって適した運動量が異なります。研究や診療指針でも、痛みの強さと組織の反応性に合わせて、負荷を段階的に調整することが重視されています。
参考資料
- Kelley MJ, Shaffer MA, Kuhn JE, et al. Shoulder Pain and Mobility Deficits: Adhesive Capsulitis. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy. 2013;43(5):A1-A31. doi:10.2519/jospt.2013.0302
- Hand C, Clipsham K, Rees JL, Carr AJ. Long-term outcome of frozen shoulder. Journal of Shoulder and Elbow Surgery. 2008;17(2):231-236. doi:10.1016/j.jse.2007.05.009
医療機関での確認を優先する状態
次のような状態では、症状の経過と身体の状態から、画像検査、血液検査、薬物療法、手術、救急処置などを優先すべきと判断し、施術を控えて受診をお勧めします。
- 転倒や衝突のあとに腕を動かせない
- 肩が急に大きく腫れ、強い熱感や発熱がある
- 腕へ力が入らず、物を持てない状態が急に現れた
- 胸痛、息苦しさ、冷汗を伴う
- 痛みが急速に悪化し、安静時や夜間にも激しく続く