漢方薬について

    

当院では、手技による施術の補助として、ご利用者様の体質や症状に応じて漢方薬の併用を提案させて頂くことがあります。
「漢方薬」と聞くと「昔ながらの民間療法」といった印象をお持ちの方も少なくありませんが、近年ではその効果について科学的な研究が進み、一定のエビデンスが示されているものもあります。
こうした背景を踏まえ、施術と漢方薬それぞれの特性を活かすことで、相乗的な効果が期待できると考えております。

以下に標準医療の現場で使われている比較的エビデンスレベルが高い漢方薬の例をご紹介します。

◎大建中湯(だいけんちゅうとう)— 腸閉塞や術後の腸機能回復に

大建中湯は、特に外科手術後の腸閉塞や腸管の動きが鈍る「術後イレウス」に対して、高い効果があるとされ、医療現場でも頻繁に使用されています。腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)を促進したり、消化管の血流を改善したりする作用があり、術後回復のサポートとして診療ガイドラインでも推奨されています。
大建中湯の腸管運動に対する効果

◎抑肝散(よくかんさん)— 認知症の不安や幻覚に

認知症の行動・心理症状(BPSD)への対応は、介護現場や家族にとって大きな課題です。抑肝散は、特にレビー小体型認知症における興奮、幻覚、妄想といった症状の緩和に効果が期待されており、副作用の少なさから西洋薬に代わる選択肢として注目されています。
この漢方薬は、患者のQOL(生活の質)を守る上でも、今後さらに活用の幅が広がっていくと考えられます。
抑肝散の認知症症状に対する薬理学的検証』 認知症モデルに対する抑肝散の治療効果の薬理学的検証

◎六君子湯(りっくんしとう)— 食欲不振や胃の不調に

「最近、胃の調子が悪い」「なんとなく食欲がない」——そんなときに効果があるとされるのが六君子湯です。特に機能性ディスペプシア(胃の不快感を伴う病気)に対する有効性は高く、消化器系の専門ガイドラインでも「使用を推奨」とされています。
高齢者の食欲不振や胃もたれ、吐き気など、日常的な不調にも対応できる点が、この漢方薬の強みです。
機能性ディスペプシアに対する六君子湯の有用性の検討:エビデンス確立に向けて

◎五苓散(ごれいさん)— むくみや水分代謝異常に

五苓散は、体内の「水の巡り」を整える作用があり、むくみ、水様性下痢、脳浮腫といった状態への効果が報告されています。近年では、脳の水バランスを調整する「アクアポリン」という水チャネルに作用する可能性も研究されており、現代科学の視点からも注目が集まっています。
天候で悪化する頭痛の要因と五苓散の効果の解析

漢方薬は「古くて新しい選択肢」

漢方薬は「経験の医学」としての長い歴史を持ちながら、現代科学の視点からも注目を集める「新しい選択肢」として進化を続けています。
今後はエビデンスに基づいた治療法のひとつとして、医療現場でも活用される場面が増えてくるのではないでしょうか。

ここまで読んでいただいて漢方薬に少しでもご興味を持たれた方は、ぜひ一度、ページ右側(スマートホンの場合は最下部)の《漢方薬ガイド》をご覧ください。
あなたがお悩みの症状改善や健康の維持増進につながる漢方薬を見つける一助になれば幸いです。